「スポーツ前のストレッチ」が怪我の元?プロが教える、筋肉を傷めない本当の準備運動

体の仕組み

「スポーツの前には、まず入念にストレッチ」

そう信じて、冷え切った体で一生懸命に筋肉を伸ばしていませんか?実は、その良かれと思っている習慣が、かえって怪我のリスクを高め、パフォーマンスを下げている可能性があります。

今回は、体の物理的な仕組み、特に筋肉と繊維の性質から見えてきた**「スポーツ前のストレッチの落とし穴」**について解説します。


1. そのストレッチ、筋肉を「引きちぎって」いませんか?

筋肉は、単にゴムのように伸び縮みするだけのものではありません。微細な「筋繊維」が束になり、複雑なサイクルで収縮と弛緩を繰り返す非常にデリケートな組織です。

冷えた状態の筋肉を無理に伸ばすことには、次のようなリスクが潜んでいます。

  • 「冷えた筋肉」は硬いゴムと同じ 温度が低い状態の筋肉は粘性が高く、柔軟性が低下しています。例えるなら、冷えて固まったキャラメルを無理に引っ張るようなもの。その状態で強い張力をかけると、繊維が耐えきれず、微細に「割ける」ような損傷(マイクロトラウマ)を起こしてしまいます。
  • 炎症の引き金になる 無理な引き伸ばしで生じた小さな傷は、やがて炎症や痛みに繋がり、本来のパフォーマンスを阻害する原因となります。

2. 大切なのは筋肉を伸ばすことより「潤滑」

体の機能を物理的に捉えると、単に筋肉を柔らかくすることよりも、**「関節の中が滑らかに動く状態(潤滑状態)」**を作ることの方がはるかに重要です。

止まった状態で筋肉をじわーっと伸ばし続ける「静的ストレッチ」を過度に行うと、実は関節を固定して支える力が一時的に弱まってしまいます。その結果、骨格の安定性が損なわれ、スポーツ中の急な動きに対応できなくなることがあるのです。

スポーツ前に本当に必要なのは、筋肉を引き延ばすことではなく、血流を促して体温を上げ、関節の滑り(油の回りを良くすること)を引き出すことなのです。


3. 怪我を防ぐための「正しい準備」3ステップ

安全に、そして最高のコンディションでスポーツを楽しむために、以下の順序を意識してみましょう。

  1. まずは「温める」からスタート いきなり伸ばすのではなく、軽いウォーキングやジョギング、あるいは足踏みなどの動的な動作で体温を上げます。筋肉の粘性を下げ、動ける準備を整えるのが先決です。
  2. 「動的ストレッチ」の活用 反動をつけず、関節を大きく動かしながら筋肉に刺激を入れる「ダイナミック(動的)ストレッチ」を取り入れましょう。肩を回す、股関節を回すといった動作がこれに当たります。
  3. 適度な力加減を忘れない もしストレッチを取り入れる場合でも、「痛気持ちいい」の範囲を超えないこと。筋肉には強く伸ばされると反射的に縮もうとする性質(伸張反射)があるため、優しい力で行うのが最も効果的です。

まとめ

ストレッチは決して悪ではありません。しかし、「冷えた体への過剰なストレッチ」は、筋肉を傷つける刃にもなり得ます。

体の仕組みを正しく理解し、まずは体を内側から温めること。そして、関節の潤滑を高め、筋肉の繊維をいたわりながら準備を行うこと。それが、長く健康にスポーツを続けるための秘訣です。

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